賢哲なる恣意性

桐峰矜公式ブログ

  

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ゴスペラーズの歌詞(歌詩)における「論理:感性」の配分

   

作詞に限らず、全てのクリエイティブな営みは、論理の側面と感性の側面が相互に絶妙かつ最適な配分で混ざり合って組み合わさっている。そして、そこにはもちろん創り手ひとりひとりにとっての、もっと言えば、作品ひとつひとつにとっての最適な配分というものがある。

 

例えば、ピカソやゴッホに代表されるような「絵画」などは限りなく感性の割合が強いと感じる。(実際には彼らは論理的に描いているのかもしれないがそこは知る由もない)

 

また、学者や研究者の論文のようなもの(これらも広い意味では創作物だ)はその99%以上が論理的に作られているはずだ。そうでなくては読み手が理解できないのだから当然だけれども。

 

そんな中で、とりわけ「作詞」というのは、完成形が言語情報でありながら、キャッチコピーほどフレーズ的ではなく、小説ほど文章的ではないという意味で、非常に特別な位置にあるものだと個人的には感じている。

 

そして、他と比べて、実はもっとも「論理:感性」の配分の自由度が高い創作ジャンルなのではないかとも思っている。

 

オレが音楽アーティストの中で一番好きなゴスペラーズの歌詞(歌詩)は、そういう観点からも非常に考察のしがいがあるものが数多い。

 

例えば、ゴスペラーズの中で作詞(作詩)をする頻度がもっとも高い安岡さんの場合、オレの中で「論理:感性」の配分は「4:6」くらいだと感じる。それはもちろん楽曲によって多少の変動はするのだけど、平均にならせばこんな感じになる。あと、オレの印象では、安岡さんの場合はあまりその割合が変動しないイメージがある。

 

黒沢さんの場合は、オレの中で「論理;感性」の配分は「3.5:6.5」くらいだと思っている。非常にピュアな感性というか、言い方を変えれば、余計なことは考えていないという意味での黒沢さん自身の持っている純粋さがストレートに歌詞に反映されているなあといった感じを受ける。そういう意味で、安岡さんよりも若干だけ感性よりかなと思う。

 

村上さんの作詞は、実はけっこう判断が難しいところがあるのだけど、一応「論理:感性」の配分は「3:7」だと思っている。というか、そもそも感性がかなり女性的なので、あまり理詰めでゴリゴリに攻めてくる感じはしない。逆に言えば、論理的に正しいかどうかは関係なくても、情熱で納得させるにくるような歌詞が意外と多い気がする。

 

その代表例がまさに『ひとり』だ。あの始まりのフレーズのインパクトたるや確かに半端ではないのだけど、それはまさにあのメロディに乗って村上てつやの声で歌われたら誰しも納得するしかないというレベルの「説得力」があるからであって、あれが一般的な感覚として「正しい」のかと言われれば、そこは甚だ疑わしい。

 

一般的に、「○○なのは○○だからだ」と言われると、ふと気を抜いていれば普通に納得してしまう。何故なら、枠組みだけ抜き出すと、「主張があって根拠を述べている」という論理的に正しい形式に乗っかっているからだ。

 

けれども、実は、「“愛してる”って最近言わなくなった」ということと「本当にあなたを愛し始めた」ということの間には何の因果関係もない。というかむしろ、一般的にはどちらかと言えば逆だろう。これを順接で繋いでしまったら、もはや完全に論理的な誤謬である(笑)

 

しかし、このフレーズに何とも言えない説得力があるという事実。これが感性のなせる業でなくてなんだというのか!(力説)

 

さてさて、そんなわけでラストは酒井さんだけれども、酒井さんは本当に楽曲によって「論理:感性」の配分の振れ幅が異常に大きい(笑)

 

例えば、『讃歌』や『Love Vertigo』みたいなタイプの楽曲は「論理:感性」の配分は「6:4」、いや、「7:3」と言ってもいいくらいのかなり理詰めの作風だし、逆に『いろは』や『1, 2, 3 for 5』などは、もはや論理もクソもねえ、センスだけで勝負して勝つ、という何ともスカッとするほど遊び心のある歌詞が印象的だ。

 

そういう意味で、酒井さんだけは画一的に評価できないところがある。まあ、個人的に、酒井さんはある種の「天才」だと思っているので、我々のような凡夫にはとてもじゃないが、はかり知れないのだということにしておこう(笑)

 

ちなみに、オレの中で北山さんの「論理:感性」の配分は「8:2」か、場合によっては「9:1」のような感じになってしまうのではないかという感じがする。そして、そこまで理詰め過ぎると、もはや「歌詞」としてのクオリティとしては疑わしくなってくる。

 

それを自覚しているから作詞には手を出さないのかもなあ、というオレの深読みは果たして当たっているのかどうか(笑)

 

まあ、いずれにしても、頭が良すぎると作詞には向かないというのは間違いなくひとつの真実だろう。

 

そんなわけで、自分でもよくわからない切り口で考察してみたけれども、どうだろうか。あなたの感覚と合っているかどうか。というか、考えたこともなかった人の方が多い気もするけれども(笑)

 

まあ、それはそれで、この記事が単純に面白い読み物になっていれば幸いである。

 

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