賢哲なる恣意性

桐峰矜公式ブログ

  

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誰でも簡単にすぐに稼げるようになる方法

   

インターネット上にはこのような宣伝文句が溢れ返っている。まあ、それ自体が良いか悪いかはひとまずおいておくとしても、さすがにこういう言葉で心が動かされてしまうというのは、ちょっとあまりにも頭が残念過ぎる。

 

誰しも、この一文を最初に見た瞬間から100%信じ込むなんてことはさすがにないだろうが、だんだんとページを読み進めていくうちに、なんとなくそんな気がしてきてしまうというのは意外と良くある話なのではないだろうか。

 

ここにはいくつか罠がある。まあ罠と言っても、書き手の側が読み手を騙そうとしているという意味での罠ではない。そんな事は、別にこういう直接的な文言を使っていなくても、あらゆる広告のなかで当たり前の事として日常的に様々なテクニックを用いて行われている。その点を今更どうこう言うつもりはない。そんな青臭いお子様の段階はとうに踏み越えた。

 

ともあれ、ここでいう罠というのは、そもそも単語が持っている意味によって生まれてしまう構造的な誤認識のことである。

 

「誰でも」「簡単に」「すぐに」という単語のうち、厳密に意味が確定できるのは実は「誰でも」の部分だけであって、残りの二つは非常に主観的で、ある程度の基準というか比較対象が設定されていないとまったくもって意味をなさないものである。

 

ここに罠がある。

 

おそらく書き手の側は、「理解するために特別な専門知識などいらない」という意味で「簡単に」という単語を使っているだろうし、「一般的な実業としてのビジネスに比べると収益の発生あるいは損益分岐点までの期間が早い」という意味で「すぐに」という単語を使っているのだと思われる。

 

しかし、おそらく読み手の側は、「作業負荷が低い」という意味で「簡単に」という単語を解釈しているだろうし、「明日にでも収益が発生する」くらいの感覚で「すぐに」という単語を解釈しているのではないかと思うのである。

 

まあこれは書き手の側が意図的にミスリードを仕向けているという節は確かにあるのだけど、それを差し引いても頭が残念だなと改めて思うのである。

 

「作業負荷が低い」「明日にでも収益が発生する」ビジネスというのはやはり原理的にあり得ない。極めて特殊な単発の労働ならそういう案件もないことはないだろうが、根本的にビジネスとは異なる。それではただの日雇いのバイトである。

 

そして、もっと身も蓋もない事を言ってしまえば、そもそも書き手の側も最初からそんな事は誰も言っていない。勝手に読み手の側が間違えただけである。

 

やはり、何事にも近道はないものである。しいて言うなら、誰でも簡単にすぐに稼げるようになる唯一の方法は、そんなものはないのだと理解する事ではないかとメタ的な視点から改めて思う。

 

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